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少子高齢化とIT社会が進展する21世紀初頭は,日本的課題克服への挑戦の時代である。日本の製造業はグローバルな競争にさらされ,国内空洞化の危機に直面している。半導体産業も成長の鈍化と企業の選択と集中戦略により,経営システムの構造改革が進み,産業の高度化と人材の流動化が加速される。当社は,Webサイトで熱年半導体専門家とベンチャー企業の業務仲介,教育・訓練で熟知の移転を進める。今までの経験を生かし,生涯現役で働く意欲のある人へ「自己実現による生きがいと社会参加の機会」を提供する。 |
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■ 熟年半導体専門家の活動支援サイトの立ち上げへ
当サイトの立ち上げを思い立ったのは,自ら従業員のリストラを実施した際,特に熱年の再就職支援情報を得るのに大変苦労したからである。地方の工場であったが候補先企業を訪問して.責任者と面接するまでに多くの時間を費やした。そのような情報を提供できる支援サイトを目指して,2001年2月オープンにした。会社概要を表1に示す。現在登録企業数,専門家数とも2桁に達した。また,必要な情報を効率よく得られるように,半導体関連企業のリンク集SemiLinksを備えており,多くの方が活用している。
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1.人材〔知〕の滞留と開放
日本は長らく終身雇用体制が維持され,人材の移動が少ない状態が続いた。特に地方都市圏から大都市圏への人材〔知〕の移動が,進学→就職で起き,大都市圏の大手企業へ人材〔知〕が滞留していたとも考えられる。ここで戦後生まれの団塊世代(ベビーブーマー)の定年と企業のリストラにより,大手企業にあった人材〔知〕が開放される環境になってきた。 |
2.半導体産業−熟知移転の好機
半導体産業はグローバルな競争と成長の鈍化により.経営システムの構造改革が進み,産業の高度化と人材の流動化が加速される。高度な知識・技術経験を保有した,熱年技術者・技能者(テクニシャン)が企業から開放される。これを“熟知の移転”と呼ぶことにする。自然界では熟した実は木から落ち,また種子が鳥により運ばれ,新しい大地に新芽が育つ。半導体業界の熱年者で働く意欲のある方へ「自己実現による生きがいと社会参加の機会を提供すること」が熟知を次の時代へ縦承していくことになる。まさにベンチャー企業は必要な専門家を獲得できるチャンスが到来したのである。
3.セミコンプレーンユーザーの特徴
登録企業の特緻としては,ユニークな技術を持ったベンチャー企栗で,従業員も20〜30名が多いようである。スタートアップから次の飛躍に向かう2ndステージにあり,経験豊富な特定分野の専門家が欲しい時期にあるようである。登録専門家は50歳代〜60蔵前半の方が多く,製造技術系を中心に幅広い技術分野をカバーした方が見受けられる。今後多くの登録者を期待している。利用方法を図1に,プロジェクトの流れを図2に示す。Webサイトの画面例を図3に示す。
4.業務マッチングの事例
マッチング作業は,クライアント(顧客)からの要求をWebサイトでプロジェクトの掲示公告で行い,人脈のネットワークとの相乗効果により達成できるものである。特に,後で述べる半導体シニア協会活動の効果は大きい。業務支援が両者に満足されるよう,セミコンブレーンのアドバイザとしての役割が大事となる。多くの熱年専門家の活動支援ができればと思っている。
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■ SSIS半導体シニア協会の活動 (設立趣意からの:抜粋) |
半導体産業に長年携わり多くの経験と知識を培われた方々に事情の許す限り末永く活躍して頂いて,国の内外を問わず半導体の永続的な発展に寄与して頂こうとするものである。日本半導体メーカー,設備・材料メーカー,学識者の方々の賛同を広く求めるものである。 |
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会長 川西 剛(東芝常任顧問)
会員数は個人会員245名,賛助会員42団体(12月現在)で会発足から4年目になる。会員には業界のリーダーとして活躍された方も多く,その見識の広さと人脈には目を見張るものがある。筆者は現在,広報担当の運営委員として活動中である。今後さらに多くの会員の入会,特に団塊の世代に期待している。また多くの生産拠点がある,地方都市の方々への情報提供が課題である(図4)。
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日本の製造業はグローバルな競争にさらされており,半導体産業もコスト競争力・人件費の圧縮が大きな課題である。各社は対応策としてアウトソーシングによる人件費の低減と経営の弾力化を積極的に進めている。ただし,多くのサードパーティは産業の高度化へ対応できる人材の育成が遅れている。半導体製造・装置関連企業の集積が進んでいる九州・熊本でサードパーティを対象とした教育・訓練施設を半導体関連企業の連携と支援を頂き準備を進めている(図5)。座学講座と実習を同時に行える施設として,業界で認知して頂けるレベルを目指している。その講師として熟年半導体専門家にも大いに活躍頂きたい。教育・訓練で熟知の移転を広く・効率良く進めることで,半導体産業の復権へ貢献したいと思っている。 |
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まさに激動の21世紀がスタートした。従来の日本的な経営スタイルからの脱皮が求められ,ベンチャー企業が活躍できる環境が整ってきた。半導体産業の熟知の移転,ITを積極的に活用し,身軽でスピード感のある経営をエコノミーに達成できる。サードパーティヘの教育・訓練を通してより広く業界へ貢献できる。半導体復権のキーワードの1つはこの熟知の移転かもしれない。
今回執筆の機会を提供して頂いた「電子材料」誌編集部に謝辞を申し上げる。現在,大リストラが進行中であるが非自発的退職に突然遭遇された方々を少しでも元気づけることができたならば幸いである。 |
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雑誌「電子材料」2月号より |